国民的アイドルは抱けても、そこの美女が抱けない(後編)
国民的アイドルは抱けても、そこの美女が抱けない(前編) - ナンパファイトクラブ
「飲み足りなかったけど、もう電車乗っちゃった?」
アイドルのその暴力的な一言で、あわてて電車を降り道玄坂の路地で合流をする。
深めに被った帽子と黒縁メガネで変装をしてると言えども、こんな場所を男と二人で歩いていいのだろうか?
疑問には思ったが、口には出さない。空気が壊れてしまう。
彼女は一緒に個室居酒屋に入るのを嫌がったので、数分の間隔を空けて、お互い他人を装って入った。
後ほどお酒を運んで来た店員さんに顔を見られるので、今考えると全く無意味である。
個室に入ってすぐ、隣に座った。
躊躇なくアイドルの腰に手を回すが、嫌がる様子はない。
あぁ、この子とやんのか。
自分から腰に手を回しときながら、正直そんなことを思っていた。
たしかにみんなが羨ましがるようなアイドルではあるが、俺のタイプではない。これはもう絶望的に。
今日もか...。
思い返してみれば、17でSEXを覚えてから心からタイプと思える女と寝たことがない。
すべて逃げてきた。
自分の手の届く範囲で、もう成功が確約されているような女ばかりを口説いてきた。
タイプの女が友人と付き合ったような日でも、ヘラヘラと笑いながら自分を誤魔化してきた。
今日も同じ。
タイプでないから、傷つかないし、こうやって腰に手を回しているのである。
そんなことを考えながら、居酒屋を出てラブホテルへ向かった。
結局アイドルとは、半年程度セフレの関係が続いた。
結局「アイドル」という肩書きだけを抱いていたような気がする。
決して興奮することはなかったし、自分の下らなさに虚しくなっていたが、止められはしなかった。
タイプの女が友人に抱かれようとも、「いや俺は、アイドル抱いてるし」という稚拙な考えが、自分を守ってくれた。
アイドルは翌年の総選挙で大躍進をして、トップアイドルとなった。
それと同時に、その子から連絡が来ることはなくなった。
最近は、バラエティー等でごくたまにみるようになったが、特に何も思うことはない。
変わってないのは自分だけである。
そろそろ変わらないといけない。
年齢的にも本気で恋愛ができるのは、あと5年といったところだろう。
本当にタイプな子に、「あなたを抱きたい」と言える人間にならないといけない。
いつまでも幼く未熟な精神性で、自分を誤魔化し続けてはいけない。
いまいちど、25年間培ってきたこの人間性を破壊しなければならない。
街角に出よう。
街を歩くタイプな子に声をかけよう。自分の力でご飯に誘い、自分の力でしっかりと口説こう。
イージーゲームはつまらない。
僕はアイドルよりも、そこの美女が口説きたい。